新幹線で東京から神戸に行くときに得する往復割引
電車に乗ってどこかへ行くとき、乗車券は乗る駅から降りる駅まで買うのが普通だろう。
しかし遠くまで行くときに、場合によっては目的地よりも遠くまで買ったほうが安くなるケースがある。
それが「往復割引きっぷ」だ。
条件は簡単で、片道の距離が601km以上あるところまでを同じ経路で往復するときに適用され、全区間で乗車券が1割引になる。
東京〜新神戸では600km以下
今回、家族旅行で神戸まで新幹線で行くことになったのだが、普通に買った場合だと、東京駅から新神戸駅までの乗車券は片道で9,290円(581km〜600kmの料金帯)、往復で18,580円となる。
東京駅から新神戸駅までの距離を見てみると589.5km。10kmほど足りずにギリギリ往復割引の適用外になってしまう。
そこで、特急券はそのまま新神戸駅までにしておきつつ、乗車券だけを次の新幹線駅である西明石駅まで買ってみる。東京駅から西明石駅までは612.3km。
乗車券の料金は101kmを越えると20km単位で段階的に上がって行くので、この場合は601km〜640km (601km以上は40km単位)の料金が適用されて、片道9,610円となる。
これであれば601kmを越えているので、往復割引が適用される。
片道あたりは1割引の8,649円となり、1の位は切り捨てられるので8,640円。
往復で17,280円となるので、普通に新神戸まで買うよりむしろ1,300円お得になるのだ。
実際はこれに東京駅から新神戸駅までの特急料金が追加されるので、のぞみの指定席を利用した場合はそのままなら28,320円。
乗車券だけ西明石駅まで伸ばして往復割引を適用させれば27,020円となる。
在来線の神戸のケースでは注意が必要
この制度は新幹線に限った話ではなく、もちろん在来線でも使える。
例えば東京駅から新大阪駅までは新幹線で、新大阪駅から神戸駅は在来線というルートで乗るとしても、わざと601kmを越える駅まで買えばよいのだ。
時刻表で東京駅から601kmを越える駅を探してみると、目的地の神戸駅より7駅先の垂水駅が602.6kmとなっている。
ならば東京駅から垂水駅までの往復きっぷを買えば往復割引が適用になるか、といったらここに落とし穴があって適用にはならないのだ。
これは「特定の都区市内を発着する場合の特例」というものが適用されるため。
遠出するときに乗車駅のところが駅名ではなく「東京都区内」や「東京山手線内」などと印字されているものがそうだ。
他には札幌市、仙台市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市にも設定されている。
この特例の仕組みは、その都市の中心駅から201km以上(東京山手線内は101km以上200km以下)離れたところに行くときに適用される。
今回の東京駅 (東京都区内) から神戸駅 (神戸市内) に行く場合もこれが適用される。
ちなみにこのケースで関連する東京都区内、大阪市内、神戸市内の範囲は以下のようになっている。
運賃の計算は各都市の赤丸で表している中心駅が基準となるので、例えば品川駅から神戸の手前の三ノ宮駅までの乗車券を買ったとしても、運賃計算上は東京駅から神戸駅までの金額となり、「東京都区内 → 神戸市内」という切符が発券される。
このルールがあるので、例え601kmを越えている垂水駅まで買ったとしても、運賃計算上は589.5kmの神戸駅扱いとなってしまって、往復割引は適用されないのだ。
この場合では、神戸市の端である舞子駅の次の明石駅 (608.9km) まで買うことで、ようやく往復割引が適用となる。これも前述の新幹線のときと同じく1,300円のお得。
実際に切符を買ってみた
ちなみに今回の旅行ではこんな感じに切符を買ってみた。
自分の分 (左) は秋葉原駅まで定期があるので、東京都区内発。他の家族の分(右)は最寄りの三鷹駅から買っている。
三鷹駅は東京23区から外れてしまっているので、東京都区内扱いにはならない。
ではなぜ自分の分のほうはさっき言っていた西明石駅までではなく、「ひめじ別所」駅というあまり聞き慣れない駅までになっているのか。
これは最初のほうで書いた通り、601km〜640kmは同じ料金であるので、その範囲内であればもっと遠くの駅まで買ってしまっても大丈夫なのだ。
東京都区内の中心駅である東京駅からの距離は、明石駅までが608.9km、西明石駅が612.3km、加古川駅が628.6km、今回選んだひめじ別所駅が637.9km、その隣の御着駅が640.0kmとなっており、ここまで全部が同じ片道9,610円だ。
本当はキリよく御着駅の次の駅である姫路駅まで買いたかったが、残念ながら姫路駅は東京駅から644.3kmなので、次の料金帯の9,830円となってしまう。
往復割引を適用しても17,680円となって、差額が900円と割安感が薄れてしまう。(それでも神戸・新神戸まで買うよりは安い)
そこでせめて「ひめじ」と名の付く駅にすることで誤摩化してみた。
ちなみに今回はたまたま御着駅が640kmジャストだったので同じ料金帯であったが、運賃計算時に使う距離は小数点以下が切り上げて考えられるので、例えば640.1kmだったとしたら切り上げられて641km〜680kmの料金で計算されてしまうので注意が必要だ。
ちなみに家族のほうは都区内基準の東京駅からではなく、普通に三鷹駅からの距離で運賃計算がされるので、同じ料金帯に収めるには東京駅〜三鷹駅の24.1kmを差し引いて東京駅から615.9kmの駅までとなる。
西明石駅の隣には大久保駅 (615.1km) がある。東京にも新宿駅の隣に大久保駅があるので面白い切符になったかもしれないが、特に意味もなく西明石駅までにしてしまった。
さらに上の切符にある通り、往復割引は学生割引も併用できる。
目的地より遠くまで買うその他のメリット
運賃計算について少々マニアックな話になってしまったが、目的地より遠くの駅まで買うメリットというのは他にもある。
例えば神戸駅まで来たはいいが、急に気が変わって西明石駅の駅弁の「しゃぶしゃぶ弁当松風」を食べたくなったとしよう。
普通に神戸駅までしか買っていなければ神戸駅から西明石駅までの切符(片道380円)を新たに買わなければならないが、西明石駅もしくはそれより遠くの駅までの往復切符を買ってあれば、追加料金なしで西明石駅まで足を伸ばせるのだ。
さらにこの場合は片道が101kmを越えている切符なので、折り返したりしなければ経路上では何度でも途中下車が可能だ。
これにより神戸駅で降りてちょっと用事を済ませてから、西明石駅まで行ってお昼ご飯、なんてこともできてしまうのだ。
また、切符の有効期限も距離に応じて定められており、〜100kmが1日、〜200kmが2日間、〜400kmが3日間、〜600kmが4日間、〜800kmが5日間、…… となっている。
今回の場合では往復割引が効かない神戸駅まで買ったら往復で8日間有効、往復割引のきく明石駅以西まで買えば往復で10日間有効になる。
途中下車したときは有効期間内ならば、そのまま日付を跨いでしまっても大丈夫。
例えば名古屋で1泊、京都で5泊、大阪で1泊、神戸で2泊してから西明石に行ってそこから新幹線で一気に帰る、という9泊10日旅行も、同じ切符で可能になるのだ。
行く前は用がないと思っていても、旅行先で急に気が変わるということは無きにしも非ず。
せっかくなら目的地までと同じ料金帯の一番遠い駅まで買っておくとよいかもしれない。
まとめ
後半では往復割引の話から脱線してしまったので、最後にまとめと諸注意を。
- 東京都区内から神戸を往復する時は乗車券だけわざと明石駅 (在来線) or 西明石駅〜御着駅のどこかまで買って往復割引を適用しよう。昼飯代くらいは浮く。
- 往復割引は同じ経路を往復するときのみ適用されるので、行きと帰りで別ルートを通る場合は適用外となる。
- 発駅と着駅の「特定の都区市内」エリア内においては乗り降りは1回しかできない。それ以外の駅ならば戻らない限り経路上のどの駅でも途中下車できる。例えば三ノ宮駅で途中下車したあと神戸駅でも下車した場合は同じエリア内で2度目になるので、その時点で切符は無効になる。 (注:認識違いにつき取り消し)。例えば東京駅から乗ったときに、次の品川駅は発駅と同じ「東京都区内」エリアなので途中下車はできないが、その次の新横浜は範囲外なので途中下車できる。もちろん各駅ごとに途中下車することも可能。
- 往復割引は通年で適用できるが、利用可能期間や途中下車できないなどの条件で問題ないのであれば「新幹線回数券(6枚つづり / 3ヶ月有効)」や、何日間かかけて散策するなら「京阪神ゾーン(5日間有効) ※2012年度末で廃止」などの周遊券のほうが安い場合もあるので、行程に即した切符の買い方をするとよい。今回の旅の場合はこの往復割引が最安だったのでこれにした。
追記(2011/09/14 02:05)
新横浜駅からの場合はどうなるのか、という質問を受けたので追記しておく。
新横浜駅は横浜市内扱いで、運賃計算は横浜駅となるので、基準の東京駅からは 28.8km となる。
東京起算の西明石駅までの営業キロは 612.3km なので、横浜市内からだと 583.5km となって往復割引にはならない。
この場合は次の姫路駅 (東京起算644.3km) まで買えば移動距離が 615.5km になるので、往復割引が適用される。
新横浜駅(横浜市内/28.8km)〜新神戸駅(神戸市内/589.5km)までは 560.7km で片道8,960円、往復17,920円。
姫路駅まで買って往復割引を適用すると往復で17,280円なので、往復割引のほうが640円安い。
東京都区内からのケースと比べるとやや割得感が薄いが、安いに越したことはないので姫路駅まで買っておいて損はないだろう。
ちなみに品川駅は東京都区内の駅なので、運賃計算上は東京駅からのケースと同じである。
追記 (2015/12/18 08:54)
4年前に記事を書いたままで、2014年4月の消費税8%化による価格改定が反映されていなかったので修正した。
一律に値上がりしたことで、往復割引を適用したときの差額は若干広がった。
記事修正 (2017/09/27 02:34)
まとめ欄の項目についてコメントをいただいて確認したところ、発駅と着駅を含む「特定の都区市内」以外ならば他の駅と同様に、経路を戻らない限りは途中下車が何度でも可能だったので当該箇所を取り消して記事を修正 (取り消し線の部分)。
取り消し線部分について正しくは「東京駅から乗って三ノ宮駅と神戸駅で途中下車して西明石駅で下車という行程も可能」、もしくは「東京駅から乗って三ノ宮駅で途中下車してから、同じ神戸市内の神戸駅で下車も可能 (きっぷの着駅ではないため)」。訂正してお詫び申し上げます。
ご指摘いただいた方、ありがとうございました。
2017/09/26 22:29
1点質問がございます。
下記の説明がなされておりますが、「東京都区内」~「西明石駅」の切符ですと、
西明石駅は特定都区市内ではないので、東京都区内⇒三ノ宮駅⇒神戸駅⇒西明石駅、
といった途中下車は可能なのではないでしょうか。
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上記に挙げた「特定の都区市内」エリア内においては乗り降りは1回しかできない。例えば三ノ宮駅で途中下車したあと神戸駅でも下車した場合は同じエリア内で2度目になるので、その時点で切符は無効になる。特定の都区市内でないところであれば各駅毎に途中下車しても大丈夫。
2017/09/27 02:37
> 匿名 様
確認しましたところ、認識違いでしたので記事を修正しました。
ご指摘いただきましてありがとうございました。